5.14

 今回の特別講義は地域と社会とデザインというテーマで、梶本氏の講義。以前はGK京都に務めており、ヤマハのバイク、ジェットスキースノーモービル、あるいは鉄道車両のデザインなどを務めていたという。ちなみに、GKとはグループ小池の略であり、東京藝術大学の小池教授の元に集まった学生たちが立ち上げた会社なのだそうだ。梶本氏は会社の中で前半はプロダクトデザインを、後半に入ると環境系の仕事に携わることが増えた。今回説明してくれたのは、主にそんなデザインである。

 話してくれたのは、にぎわいというテーマを軸にしたデザイン。賑わいとは、イベントや祭り事、住民参加、環境産業商業の活性化と言ったことが挙げられる。長野県の温泉町で企画、デザインをした例として、葛飾北斎をテーマとした長屋祭りの企画や、大阪城の夜のライトアップの企画などを紹介してくれた。「ヨシ」を演出装置として使用したライトアップで、住民参加で地元のお花屋さんに飾り付けをしてもらったりなども行なったという。そのほかにも、歩行者用の歩道を広げて車道を狭くしたら、という社会実験もあった。お揃いのtシャツなども作り、楽しみながら行なったという。実際に実験の後には歩道が拡張され、実験の通り人と車の交通量の操作に成功しており、印象的だった。

 

 今回の講義では、「にぎわい」というテーマがとても心に残っている。イベントや祭り、住民参加、観光産業商業の活性化という三点がとても具体的で、これからのことのデザインにとってもとても重要なものであるのではないかと感じた。実際に具体例を多く見せていただけたので、イメージもしやすかった。上に書いたものの他にも、イベントは廃棄物をできるだけ出さないことをテーマに行ったワークショップなど、様々な工夫は見せていただけでとても楽しかった。

5.07

 この日の特別講義は先名康明氏。Mistletoe(株)のProducerとして、スタートアップをしたい企業に投資を行なっている。講義のあちらこちらで学生に能動的に参加させるシーンなどがあり、楽しんで参加することができた。「out-of-the-box」ですすめるという話もあり、この講義で使用したメモ用のノートは見返してもキーワードだけがちらちらと並んでいる。

 まずは「デザイン」とは何かという問いに対し、先名氏は「やりたいこと、目標、想いの実現のための具体的なアイディア」だと答えている。そしてスタートアップは未来をデザインすることに当たり、今急速にそのスタートアップ事業が進んでいるという。

 また今の時代は急速に物事が発展し、世の中が様々な動きを見せている。この中で現役を担うことができる私たちはとてもラッキーな世代だと先名氏は語っていた。

 AIについて。アラン・ケイは「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ」と述べたと言う。またピカソは「PCもAIも自分で課題設定はできない」と語ったそうだ。様々な偉人の言葉から、これからの世の中はどうなろうと自分たちの力が必要になるのだろうと考えることができる。

 

 さて、先名氏がスライドに入れ込んだ学生が能動的に参加するシーンはどれも面白く、中でも楽しく参加できたのは「どんな素晴らしい未来になるか絵を描く」というものだった。私は「人がAIを怖がらない世界」「人がモノと仲良く暮らす世界」を素晴らしい未来と考え、絵を描いた。ただ雑然と頭の中で未来を考えるのではなく、きちんとイラストにアウトプットしてみると、自分が何をしたいのか具体的に見えてきて、これからどうしたいのかを考えるきっかけをいただけた気がした。私の描いた絵には、ロボットと様々な世界の人が笑いあっている。

4.23

 この日はイノベーション特論に続き藤原由翼さんの講義であった。はじめに自己紹介として話してくれたのは、AIトラベルという会社を立ち上げ、社長業が忙しくなりデザイナーとして動きづらくなったのでデザインエクゼクティブオフィサー(DEO)という職に移ったということ。大学2年生の時にはフリーランスのデザイナーとして活動をしていたという。「女性の鎖骨」という独自の魅力の解読をし、週3で30万稼いだという(すごい)。その後も新ブランドの立ち上げにブランディングから関わるなど、学生のうちから積極的に動く能動的な面が強かったからこそ今の立ち位置にいるのだろうと考えた。

 話の中でも印象に残ったのは、「勝手に20パーセントルール」という独自の手法についての解説のシーンである。藤原氏は若い頃からこの勝手に20パーセントルールを実行していると言い、そのルールの内容は、「3ヶ月後には自分はこのようなことをしているだろう」と想像し、その時に必要なスキルを考え、あらかじめそのスキルを身につけるため20パーセント努力すると言うものであった。この内容は今の数ヶ月で状況がガラリと変わる私たち学生にとってとても必要となる内容であると感じ、ぜひ実践したいと授業終わりに学生同士で盛り上がったのを覚えている。

 

  藤原氏の話を初めて聞いた時は、とてもエネルギッシュな人柄に少し驚いた。だが、話を聞いていくごとに、しっかりと芯の通った考え方や話し方にとても惹かれるところが多かった。私はきっとなれないだろうけれど、憧れるデザイナーの一人になった。

 また、学生にあらかじめアンケートを実施し、その質問に答えていくという後半の講義内容にはとても感銘を受けた。ただ自分が話をして終わる講義ではなく、こうして学生のためになるようコミュニケーションを取って講義を組み立ててくれるという面を見て、デザイナーとしてとても優れている人なのだろうと改めて感じた。これから少しずつでも真似していきたい。

4.16

 まずお話いただいたのは実際に今UXデザインがとても重要視され始め、デザインのアプローチとしてとても大きく見られているという点だった。日立ではUX設計部を設立する、東芝ではパンフレットに大きく記載するなど、たくさんの企業がUXに舵を切っているそうだ。

 企業がなぜそこまでUXに舵をとるのか、少し後では、「体験が商品そのものである」という言葉が出たことが印象的だ。例としてフィルムカメラについての説明があった。フィルムカメラが実際に発売されるまでは、ガラス乾板と呼ばれる方法で光を記録することが一般的だった。たくさんの工程が必要であり、光にさらさないように、ガラスを割らないように、という専門的技術が必要とされた。その一方で、新しく発明されたフィルムカメラはシャッターを切ることを「体験」として定義し、爆発的なヒットを生んだ。体験を商品にすることは、人間の欲求を満たし、人間をより良い場所へ向かわせる力があるのだ。

 

 上でフィルムカメラについてお話いただいたことを大きく取り上げたのは、私自身が写真を趣味にしている点から来ている。今はデジタルカメラが当たり前に使われており、デジタルカメラの「体験が商品そのもの」という部分に大きく当てはまるのは、現像をする必要がなくすぐに撮った写真を画面で確認できる、フィルムの残り枚数を機にする必要がない、データとして残る、などの点であろう。だがこのデジタルカメラの体験が円満した今日で、上で取り上げたフィルムカメラの体験がまたヒットを生んでいる。今フィルムカメラの体験は、独特の風合いや撮った写真をすぐには見ることのできないタイムカプセルのようなワクワク感、残り枚数を気にしながら丁寧に撮っていく感覚などが評価されているのだという。当時の最先端として扱われた体験の商品が、今また違う形の体験の商品になっているということではないだろうか。

 このような例はきっと他のジャンルでも見られるだろうし、もしかしたらこれから先デジタルカメラに変わる撮影方法が生まれた後、またデジタルカメラの体験が違う形で評価されるのかもしれない。色々な見方を気にかけていきたいと考えた。